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文春新書『英語学習の極意』著者サイト

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松山市周辺の新たな鉄道整備案

 この文章は平成12年に書き、ホームページにアップしたあと愛媛県庁・県議会や松山市役所・市議会にリンクを送った。「すばらしいですね」という返信が来たが、それっきり。結局、政治家の誰かが銭カネの匂いを察して動きださない限り、ことは始まらないわけである。


松山市を根本から変える
JR・伊予鉄共同運営
「松山線」構想はこれだ!


 松山市の鉄道網は、『坊ちゃん』に出てくる三津浜から市内への軽便鉄道に始まり、明治時代の終りにはほぼ現在の形に出来上がっていました。伊予鉄松山市駅を中心に四方に伸びる鉄道網計画は、旧街道筋の歴史を踏まえつつ、驚くほど先進的なものでした。

 昭和2年4月3日に国鉄予讃(よさん)線が、伊予鉄の鉄道網との接続を全く考慮せぬ形で南下してきます。これによって松山と高松が鉄道で結ばれました。

 本来、松山と高松は讃岐(さぬき)街道(=今の国道11号線)で横一直線に結ばれていたのです。わざわざ高縄半島をぐるりと回って、今治経由のルートで高松へ行くというのは、あるべき姿ではありません。

 実際、讃岐街道に沿って松山から東に伸びていたのが、伊予鉄の横河原(よこがわら)線でした。本来、この横河原線が西条(さいじょう)・新居浜(にいはま)に抜けて高松へと向かうべきだった。
 峨々(がが)たる山を抜ける難工事ではありますが、この線が完成すれば30分から1時間の短縮が可能。新幹線建設などと大風呂敷を広げずとも、松山には松山の課題と解決策があるのです。

 首都圏や京阪神で鉄道の便利さに慣れた者は、鉄道が不便なまちに来ると当惑してしまいます。「ああ、田舎は困るなあ」と思ってしまいます。乗って疲れず、環境にやさしい「鉄道」は、都市交通の要(かなめ)として、あらためて注目されるべきです。

 現在のJRと伊予鉄の路線をうまく活かしつつ、将来の松山のための鉄道路線案を考えました。いかがでしょうか。皆様のご意見をお待ちしています。

1. 構想の概要:

・路線の経路


<既存の鉄道網>
 松山の既存の鉄道網は、次の3つのシステムから成り立っています。
(1) 松山市駅を出発点として三方に伸びる「郊外電車」
(2) 松山城をめぐる形で環状線を形作る「市内電車」(路面電車)
(3) これらとは別体系のJR四国の「予讃線」
 これらのうち (1) と (2) の接点は「松山市駅」と「大手町」、「古町」。
 (2) と (3) との接点は「JR松山駅前」。
 (1) と (3) には接点はありません。伊予鉄と「国鉄」のそれぞれの唯我独尊ぶりが窺(うかが)えます。

<ここで提案する鉄道網>
 松山市周辺の伊予郡砥部(とべ)町、温泉郡重信(しげのぶ)町・川内(かわうち)町までを含めた第二環状線を作ろうというものです。

 路線の経路は、南から時計回りに以下のとおりです:
砥部駅 - 動物園前駅 - 坊ちゃんスタジアム(野球場)前駅(=現JR予讃線の市坪(いちつぼ)駅) - 新土居田(しん・どいだ)(=JR予讃線と伊予鉄郡中(ぐんちゅう)線の交差点に作る [現状は単に立体交差しているだけで、駅はない]) - 松山中央駅(=現JR松山駅) - 古町(こまち)駅 - 松山大学前駅(鉄砲町の南に作る) - 道後駅 - 愛大(あいだい)<愛媛大学>農学部前駅(=同キャンパスと松山東雲(しののめ)大学の間に作る) - 愛大医学部前(すなわち重信駅) - 川内駅。

 この馬蹄(ばてい)形の新線を「松山線」と仮称します。
 基本的に新しい線路を建設することになりますが、坊ちゃんスタジアム前駅から松山中央駅までは、既存の予讃線を複線化して共用します。

・路線の位置付け

 全線を複線とし、5分から15分に1本が運行する通勤・通学・観光路線とします。JR四国と伊予鉄が共同運行し、JR四国の列車と伊予鉄の列車を混在させる。損益もJR四国と伊予鉄の出資・運営参加の比率で分割します。
 首都圏では私鉄・JR・営団地下鉄・都営地下鉄が相互に乗り入れしており、異なる会社の列車が1つのの路線を使用するのは日常の光景です。

・予讃線本線を短縮

 予讃線の経路を短縮し、新幹線建設並みの効果をあげることができます。
 「松山線」は、坊ちゃんスタジアム前駅から時計回りに終点の川内駅まで、JR予讃線の本線と線路を共用します。そして、川内駅から先も単線でさらに東へ伸ばし、伊予小松駅まで繋(つな)げます。

 従来の予讃線は、松山から北上して北条(ほうじょう)を経由し今治(いまばり)に至り、そこから今度は南下して壬生川(にゅうがわ)、小松、西条(さいじょう)へと繋がっていました。
 これを改めて、予讃線の本線は「松山線」を通って横一直線に小松に至るようにします。ここにJRの急行・特急を走らせます。
 このルートによって、現在の北条・今治経由に比べて松山~高松間が30分以上短縮できます。

 既存路線の松山-北条-今治-壬生川-小松は、ワンマンカーを走らせる海岸路線となります。現在の松山-長浜-大洲間のような具合です。ただし、列車の頻度は現在の予讃線のレベルを維持します。単線に付きものの、長時間にわたる急行・特急待ちがなくなるので、沿線住民にもメリットのほうが大きいはずです。

・将来構想「松山-高知線」に繋げる

 松山中央駅から砥部へと延びる線路は、ゆくゆくは単線で久万(くま)に繋げ、さらに高知へと延長します。
 美川(みかわ)、柳谷(やなだに)から高知県の仁淀(によど)、越知(おち)を経て土讃(どさん)線の佐川(さかわ)駅に繋げると、あとは高知市まで東へ一直線です。

 この「松高線」(仮称)により、松山中央駅から久万までは約30分で結ばれます。交通の難所三坂峠(みさかとうげ)越えは、ループ式のトンネルによります。冬は雪に閉ざされ不便な山村だった久万は、軽井沢のような別荘地に生まれ変わります。
 松山~高知間も約2時間で結ばれます。

 実は、松山から久万経由で高知に至る鉄道路線の敷設認可は、明治28年にいったん衆議院を通過したのですが、その後の政争のあおりで立ち消えとなった経緯があります。
 何の大それた絵空事でもない、日本の鉄道の草創期からあった構想なのです。

・道路建設に準ずる公的資金の導入を

 「松山線」は、全線を高架線または地下路線とします。
 地下鉄化するのは、松山中央駅から古町を経て本町あたりまでの区間と、上一万の手前から道後の先まで。古町駅と道後駅は地下駅となります。
 松山中央駅から古町周辺までは、今やビルが立ち並んでいて高架線建設が不可能ですし、道後周辺は景観保持の観点からも地下鉄化が望ましい。

 この高架橋および地下トンネルの建設のための用地買収および建設の費用は、中央政府・県庁・市役所が自動車道路建設に準ずるものとして資金を供出します。すなわち、レールを敷くためのインフラは、国・県・市が資金を出し、所有権も国・県・市に属するものとします。
 レールの敷設や関連施設設置、および完工後の運営は、JR四国と伊予鉄が共同出資・運営を行うものとします。
 坊ちゃんスタジアム前駅(今のJR市坪駅)から動物園前駅の手前(砥部町北部)までは、重信川沿いを走らせますので、ビル・住宅の立ち退きは不要です。


2.この構想のねらい:

・愛媛県民全体の利益のためになる


 愛媛県民の生活の利便と観光振興に資するプロジェクトです。事業者であるJR四国と伊予鉄にとっても、双方にメリットがあるものとなっています。
 予讃線の30分短縮は中南予の住民にとって、ゆうに新幹線の建設に匹敵します。また、新居浜が松山への鉄道通勤圏に入ることになります。砥部や川内からの松山への通勤・通学も大幅に便利になります。

・観光とレジャーのためになる

 道後駅に全ての急行といくつかの特急を停めて、道後温泉への観光客への利便を提供します。
 道後温泉、坊ちゃんスタジアム(野球場)、動物園、砥部(磁器「砥部焼」で有名)という観光・レジャーのポイントが相互に短時間で結ばれます。線路が久万まで延びれば、これに高原の避暑地が加わります。

・大学のまち「松山」を作れ

 市内城北地区から重信町まで分散している愛媛大学(愛大)の3つのキャンパスと、松山大学と松山東雲大学が相互に鉄道で結ばれてキャンパス間の移動が便利になります。自然と、3大学、5キャンパスの間の授業単位の共用化も可能となります。
 大学が「生涯教育」活動に貢献することは、今日つよく望まれています。「松山線」は、これを強力にバックアップします。
 大学病院への来訪者にとっても便利な路線となります。

・伊予鉄とJRの共生をはかる

 実は、松山市では、地元の有力資本である伊予鉄の利益に反するプロジェクトは立ち行かないのです。プロジェクトへの伊予鉄の参画は不可欠です。
 しかし、伊予鉄はここ数十年あらたなインフラ建設を行ったことがなく、率直なところ「松山線」のようなプロジェクトを立ち上げる気概もノウハウもありません。JR四国の参画が求められる所以(ゆえん)です。

 民間資本と公的機関の共同出資によるいわゆる「第三セクター」の創出は、とくにはこれを前提としていません。率直にいって、わが国の多くの「第三セクター」は、一流の人材を集中する場所としては機能していないように思われます。悪しき「社会主義的低効率企業」となっている例が少なくありません。むしろ、民間資本と公的機関の役割をはっきりと分けて、公的機関はインフラ整備に徹し、民間企業はその基礎のうえに立って効率的なビジネスを行う、という形にした方がよいでしょう。

 伊予鉄にとって、このプロジェクトのメリットは以下のとおりです。

(1) 建設資金に公的資金の援助を得ることで、伊予鉄単独では不可能な事業拡大を可能とする。

(2) 道後駅、松山大学前駅(鉄砲町南駅)、古町駅、松山中央駅、新土居田駅(伊予鉄が郡中線に新駅を作ることが前提)が、伊予鉄の既存路線との乗換駅になります。全体として、松山周辺の鉄道交通の利便性が飛躍的に向上するので、自動車利用者の鉄道利用へのシフトが期待できます。

(3) 路面電車の城北線や郊外電車の横河原線は、一時的には乗客減少となる可能性があります。しかし、[松山線」自体が伊予鉄とJR四国の共同運営ですから、伊予鉄トータルとして見れば、利益拡大の方向にあるはずです。

(4) 愛大医学部前(重信)駅周辺と砥部駅周辺に伊予鉄がバスを走らせれば、この周辺の交通の利便性が増し、住宅地開発に繋がります。伊予鉄が新駅周辺の住宅開発を行えば、新たなビジネスチャンスとなります。


3. 公的資金導入の根拠:

 伊予鉄・JR四国という民間企業の鉄道に公的資金を投入する理由付けは以下のとおりです。

・ 公的資金を投ずる部分は、鉄道用地買収および高架橋・トンネル建設です。これは、自動車道路建設の際に用地買収・道路建設を行うのと全く同じ作業です。
民間企業のバスが走る道路を公的資金で作っているのですから、民間企業の鉄道車両が走る「道路」を公的資金で作ることは、これと大差ありません。公的資金で作る部分(高架橋・トンネル)自体は、公的所有とします。伊予鉄・JR四国は、単にこれの独占使用権を貸与されているにすぎません。

・ 「松山線」によって、予讃線の本線が短縮されます。JR四国にとっては、現在の予讃線利用者の大部分が、距離の短い「新予讃線」ルートを利用することになってしまうため、そこだけをとってみれば鉄道料金が下がって「収入減」となってしまいます。すなわち、住民にとっては経済的・時間的メリットのある新線建設であるが、JR四国のビジネスとしては必ずしもメリットとなりません。
このようなプロジェクトは、公的資金の援助がなければ実現できません。納税者の立場から言えば、支払った税金が「新線建設による経済メリット」という形で還元されるのであれば、一定の納得性があると言えます。

・ 地域の鉄道会社2社を均しく利するものであり、特定の民間企業1社のみを利するものではありません。これが、公的資金投入に踏み切りやすい状況を作っています。

・ 「松山線」は、将来の松山市そのもののあり方に関わるものでもあります。すなわち、松山市は将来的に砥部町、重信町、川内町を合併して大「松山市」を形成していく必要があるが、この「松山線」はその象徴的さきがけとなるものです。


4. 「今治」問題など:

 新「予讃線」ルートの建設により、人口12万人のタオルのまち今治いまばり市は予讃線の本線から外れてしまうことになります。「中予・南予の都合で決められては困る。今治市にとっては死活問題だ!」という声が聞こえてきそうです。

 しかし、「しまなみ海道(かいどう)<今治・尾道間の瀬戸内海縦断ルート>」もできた今、ここは今治市にも我慢してもらいたいところです。古(いにし)えからの讃岐街道に鉄道を走らせようということなのですから。
 しまなみ海道開通前なら強い抵抗があったでしょう。しかし、巨額の公的資金で建設した しまなみ海道開通の今なら、話が通るのではないでしょうか。

*     *     *

 この「松山線」構想は平成10年ごろから暖めていたものです。地図の上でいろいろとルートを引き直してみながら「明治の人々はこういうふうにして夢を膨らませていったのだろうなぁ」と思ったものです。
 
 実際に、伊予鉄横河原線の東端からJR予讃線壬生川(にゅうがわ)駅まで、タクシーで国道11号線を走ってもみました。松山平野が突然に険(けわ)しい山並みに変わるのには、本当にびっくり。この山が予讃線を阻(はば)み、東予と中予を分断してきたのであり、またその山並みを縫うようにして古えの人々は讃岐街道を作ったのでしょう。

 伊予鉄の鉄道網の建設、国鉄・JR予讃線の建設、それぞれに当時の人々の夢と苦難があり、涙と喜びがあったに違いありません。そして50年、100年を経て、私たちは明治・大正の人々の労苦の恩恵を今に活かしつつ、日々を過ごしています。
 平成の我々は、次の時代の人々に何を残してあげられるでしょうか。すばらしいふるさと、それは我々が日々受け継ぎ、日々創り出す、壮大で豊かなドラマです。


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